家計急変時の支援

私立中学の授業料減免、家計急変時に使える制度:都道府県と学校、両方を確認する

私立中学に入学した後で、保護者の失職や離婚などにより家計が急変することがあります。そのときの支援は「都道府県の制度」と「学校独自の制度」という別々の窓口に分かれており、対象・所得の判定基準・申請先がそれぞれ異なります。埼玉県・神奈川県・大阪府・兵庫県・愛知県・長野県と開成学園の実例を一次資料で確認し、確認する順番を整理します。

対象: 私立中学在学中に保護者の失職・死亡・離婚等で家計が急変した家庭(制度は都道府県・学校ごとに異なる)
公開 2026-09-07最終確認 2026-10-19合同会社フューチャープロンプト

家計急変時の支援窓口:都道府県と学校の2つ

私立中学の入学後に家計が急変した場合の支援制度は、都道府県が私立学校向けに設ける補助金と学校が独自に設ける授業料免除・奨学金の2種類があり、運営主体も申請先も別です。どちらか一方しかない都道府県・学校もあれば、両方ある場合もあります。

本記事では、一次資料で内容を直接確認できた埼玉県の制度と、開成学園の制度を実例として、それぞれの対象・所得判定・申請先の違いを整理します。全国一律の制度ではないため、まずはご自身の都道府県と学校それぞれで制度の有無を確認することが出発点になります。

都道府県制度の実例:埼玉県「父母負担軽減事業補助金」(家計急変世帯)

埼玉県の「父母負担軽減事業補助金」(県内私立小学校・中学校・中等教育学校〈前期課程〉用)のリーフレットによると、対象は埼玉県内の私立小・中学校・中等教育学校(前期課程)に在学し、児童生徒・保護者がともに埼玉県内に在住していることです。

「家計急変世帯」として新たに申請する場合、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
①事由令和7年の所得の多い方の保護者が失職等・死亡・被災に該当、または離婚により保護者でなくなっている(定年退職・産休・有期雇用契約の満了は原則「失職等」に非該当。共同親権を選択している場合は原則「離婚」に非該当)
②時期対象期間内に発生(1年生は入学後〜令和8年12月31日、2年生以上は令和8年1月1日〜12月31日)
③所得令和7年中の所得の少ない方の保護者の令和8年度住民税所得割額が354,500円未満(モデル世帯=両親・高校生・中学生の4人家族で片働きの場合、目安年収約720万円未満)

補助額は授業料補助額(上限額)336,000円で、新規申請の場合は家計急変が発生した月の翌月から月割りで支給されます。

「継続申請」は、前年以前から家計急変が続いている場合の申請で、基準が厳しくなります。次の3つをすべて満たす必要があります。住民税所得割額が135,000円未満(目安年収約400万円未満)であること、保有資産が700万円未満であること、収入状況が改善していないことです。

入学前の家計急変は、新規申請・継続申請ともに補助の対象になりません。申請の締切は学校ごとに定められているため、該当しそうな場合はまず学校に相談することが案内されています。

東京都には所得制限のない授業料軽減助成金があり、埼玉県とは仕組みが異なります。詳しくは東京都の助成金の記事で確認できます。

都道府県制度のもう一つの実例:神奈川県「私立学校生徒学費緊急支援補助金」

神奈川県公式サイトによると、「私立学校生徒学費緊急支援補助金」の対象は神奈川県内に設置された学校法人立の私立小学校・中学校・中等教育学校(前期課程)・義務教育学校です。対象事由は対象校に在学する生徒の主たる生計維持者の解雇などの理由により、生徒の家計が急変した場合とされています。

この制度の補助の仕組みは学校が生徒の授業料を軽減した場合、授業料を軽減した学校に対して神奈川県が補助するというもので、県が学校へ補助を行う形です。申請は12月頃に、学校から申請の案内があり、学校受付締切日までに必要な書類を提出する流れで、埼玉県の制度と同じく学校が窓口になります。

各校で授業料の軽減方法・時期が異なるとされており、県のページ本文に補助額はありませんが、リンク先の令和7年度の保護者向け手引きの表には授業料の補助額(年額)として336,000円が載っています。学校が実際にどれだけ軽減するかは学校ごとに違うため、在学校に個別に確認する必要があります。所得基準額や必要書類は別の記事にまとめています。

対象の条件・所得基準額・必要書類は神奈川県の緊急支援補助金の記事で確認できます。

都道府県制度のさらなる実例:大阪府・兵庫県・愛知県・長野県

大阪府公式サイトのよくある質問によると、授業料支援補助金は、私立高校や高等専修学校等の生徒を対象としており、私立小学校の児童や私立中学校の生徒については、学資負担者の家計急変の場合は授業料の減免の対象になる場合があるとされています。埼玉県・神奈川県と同じく、私立中学向けの所得制限のない一般制度は無く、家計急変時のみ学校を通じて減免に対応する仕組みです。

兵庫県の「私立小中学校等の家計急変世帯への修学支援事業補助制度」は、対象となる学校は近隣9府県にあり、兵庫県・大阪府・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県・岡山県・鳥取県・徳島県に設置されている私立小学校・中学校・中等教育学校前期課程です。対象事由は経済的不況に起因する失業、倒産、疾病による離職等の家計急変で、自己都合退職・定年退職は対象外です。収入要件は、保護者等全員の住民税所得割額の合計が135,000円未満であることです。

家計急変後の状況が課税に反映されていない場合は、世帯構成別の年収見込み表で判定します。軽減される額は月額28,000円(年額336,000円)です。資産要件は家計急変の発生時期によって異なり、令和8年中(1月1日〜12月31日)に発生した場合は資産要件なし、令和7年12月31日以前に発生した場合は資産保有額700万円未満であることが条件になります。

また他の都道府県の類似制度において支援の対象となっていないことという重複禁止の規定もあります。

愛知県の「私立小中学校等授業料軽減補助金」は、生活保護受給世帯、または私立小中学校入学後に発生した失職・倒産等の家計急変により授業料の納付が困難となった場合を対象とし、所得は年収400万円以下が目安、資産保有額は700万円未満であることが要件です。補助額は一人当たり月額最大28,000円で、例年11月下旬から申請の募集が始まります。

長野県の「私立小中学校等授業料軽減事業支援特別経費補助金」は、長野県内に私立小中学校等を設置する学校法人に在籍し、保護者等の少なくとも1名が長野県内に住所を有する生徒が対象です。対象事由は私立小中学校入学後の家計急変または入学前に不登校やいじめ等の特殊事情がある場合のいずれかで、いずれの場合も保護者等の年収目安が400万円未満相当(年収見込みまたは住民税所得割額で判定)もしくは生活保護世帯であることが条件です。資産要件は保護者等の資産保有額の合計700万円未満、加えて教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置を受けていないことも要件に含まれます。

補助額は兵庫県・愛知県と同じ月額28,000円(年額336,000円)です。愛知県と同様に生活保護世帯を対象に含む一方、長野県は入学前の不登校・いじめ等の特殊事情も対象事由に加えている点が異なります。

静岡県は、公式サイトの支援制度の一覧で、失職や収入の減少などで保護者の年間収入見込額が住民税非課税相当まで減ると見込まれる世帯を対象に、私立小中学校の児童・生徒には授業料の減免だけを行い、学校が減免した場合に県が学校へ補助金を出すと案内しています。問い合わせ先は県の私学振興課です。この一覧は台風被害への支援としてまとめられたページで、補助額や申請の時期は確認できていません。

学校独自制度の実例:開成学園「授業料特別免除」「就学支援奨学金」

開成学園の公式サイトによると、中学校・高等学校入学後、家計の急変等があり、経済的理由で学業の継続が困難になった生徒を支援するため、「授業料特別免除」と「就学支援奨学金」の制度を設けています。

「授業料特別免除」の給付条件は①保護者の家計急変により、学業の継続が困難になった生徒。②保護者の死亡または離別により、学業の継続が困難になった生徒で、給付範囲は授業料、返還義務はありません。期間は1年で、継続する場合は更新手続が必要です。

「就学支援奨学金」は給付条件が授業料特別免除と同じで、給付範囲は施設維持費・実験実習費・施設拡充資金・父母と先生の会会費・生徒会費・学級費に及びます。返還義務はなく、期間は1年(更新可、原則として通算2年まで)です。

埼玉県の制度が住民税所得割額という数値基準で判定するのに対し、開成学園の制度は保護者の経済的状況等を学園の理事会・奨学金委員会において審議し、決定するとされており、数値基準は公開されていません。

入試の成績で決まる特待生制度は、また別の仕組みです。特待生・奨学金制度の記事で栄東・渋谷教育学園幕張・開成の実例を紹介しています。

確認する順番

家計急変時の支援は制度ごとに窓口・基準が異なるため、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. まず学校に相談する(学校が申請窓口になっているケースが多く、締切も学校ごとに違います)。
  2. お住まいの都道府県に、私立小中学生向けの家計急変支援制度があるかを確認する(制度名・所得判定の基準は都道府県ごとに異なり、無い都道府県もあります)。
  3. 学校独自の授業料免除・奨学金制度の有無を確認する(給付条件・給付範囲は学校ごとに大きく異なります)。
  4. 該当しそうな制度があれば、所得判定の基準(住民税所得割額など)と、対象となる家計急変の事由の範囲を、その制度の一次資料で確認する。

受験にかかる費用の総額は総額費用逆算シミュレーターで確認できます。

授業料の減免とは別に、貸付制度が私立中学の入学や中学受験に使えるかどうかは、母子父子寡婦福祉資金の修学資金と就学支度資金の記事と受験生チャレンジ支援貸付事業の対象学年の記事で確認しています。

家計急変が続き私立中学以降の進学先自体を見直す場合は、家計が急変した場合に転校できる高校を都道府県別に探せるページ(高校進路デスク)も参考になります。

愛知の私立中学の授業料と学校の奨学金の実例は、南山中学校女子部の受験料・入学金・授業料の記事にあります。

家計急変に当たらない場合の学費補助や、私立中学に国の無償化がないことは私立中学に国の無償化はない理由と状況別の早見表の記事で確認できます。

本記事は埼玉県「父母負担軽減事業補助金」リーフレット(令和8年度・県内私立小学校・中学校・中等教育学校〈前期課程〉用)、神奈川県公式サイト「私立学校生徒学費緊急支援補助金について」、大阪府公式サイトのよくある質問、兵庫県公式サイト「令和8年度私立小中学校等の家計急変世帯への修学支援事業補助制度」、愛知県公式サイト「私立小中学校等授業料軽減補助金」、長野県公式サイト「私立小中学校等授業料軽減事業支援特別経費補助金」、開成学園公式サイトの奨学金ページで確認した内容です。制度の対象・所得判定の基準・給付額は都道府県・学校・年度によって異なり、ここに挙げた6道府県・開成学園以外の制度については未調査です(制度が無いと断定するものではありません)。神奈川県の補助上限額・軽減額は公式ページに記載がなく未確認です。京都府・福岡県・広島県の私立小中学校向けの制度は、県の公式ページを確認できていません(京都府に設置された学校は、上の兵庫県の制度の対象校に含まれます)。個別の受給可否は判断できませんので、必ずお住まいの都道府県・学校の公式案内でご確認ください。

よくある質問

Q家計が急変したら、まず何を確認すればよいですか

まずお子さんが通う学校に相談してください。埼玉県の制度のように「申請締切は学校ごとに定めている」制度もあり、学校が窓口になっているケースが大半です。そのうえで、お住まいの都道府県に私立中学生向けの家計急変支援があるか、学校独自の授業料免除・奨学金制度があるかを、それぞれ別に確認する必要があります。

Q都道府県の制度と学校独自の制度は、両方使えますか

本記事で確認した埼玉県と開成学園の制度は別々の主体(県と学校)が運営しており、それぞれの給付条件を満たせば両方の申請が可能かどうかは、制度の原文だけでは判断できません。重複利用の可否は、お住まいの都道府県の窓口と学校の両方に個別に確認してください。

Q「家計急変」とはどのような場合を指しますか

埼玉県の制度では「保護者の失職等・死亡・被災」または「離婚により保護者でなくなった」場合を家計急変としており、定年退職や産休、有期雇用契約の満了等の場合は、原則「失職等」には該当しません共同親権を選択している場合は、原則「離婚」には該当しませんという注記があります。開成学園の制度でも「保護者の家計急変」「保護者の死亡または離別」が給付条件です。何が家計急変にあたるかは制度ごとに線引きが異なるため、個別の事情に該当するかは必ず窓口に確認してください。

Q所得の判定はどのように行われますか

埼玉県の制度は住民税所得割額(道府県民税・市町村民税の合算額)で判定します。新規申請は所得の少ない方の保護者の令和8年度住民税所得割額が354,500円未満(モデル世帯で目安年収約720万円未満)、継続申請は135,000円未満(目安年収約400万円未満)とより厳しい基準になります。学校独自の制度は、開成学園のように学園内の理事会・奨学金委員会が個別に審議するケースもあり、都道府県のような明確な数値基準が公開されているとは限りません。神奈川県の制度は所得の数値基準がページ本文に明記されておらず、未確認です。

Q神奈川県の制度はどのような仕組みですか

神奈川県の私立学校生徒学費緊急支援補助金は、学校が生徒の授業料を軽減した場合にその学校へ神奈川県が補助するという仕組みです。県の令和7年度の保護者向け手引きの表には授業料の補助額(年額)として336,000円が載っていますが、学校ごとの軽減の方法や時期は学校によって異なるため、在学校への個別確認が必要です。

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